問い合わせが増えるホームページ構造とリニューアル実務―― 誰に・何を・なぜ信じられるかを先に決める。
- 迪宇 坂本

- 9月12日
- 読了時間: 5分

最初に結論です。
問い合わせはデザインの好みでは増えません。
誰に/どんな得を/どんな根拠で/どの導線で届けるかを先に決め、その順番どおりにページを組み直すと増えます。
本稿では、「構造(設計)」と「実務(進め方)」を90日で回せる粒度で解説します。読み終えたら、すぐに社内で合意形成できるはずです。
1. 「問い合わせ」を定義する――ホームページは最初の10分で勝率が上がる
まず、ホームページの主要アクションを1~2個に固定します。
たとえば
BtoBなら「無料相談」「資料請求」。
ECなら「購入」。採用なら「応募」。
加えて、応答SLAを決めておきます。「当日中にご返信」「1営業日以内に日程をご提案」など、約束を宣言して守るだけで、問い合わせ数は目に見えて変わります。スピードは最高のコピーです。
2. 構造の原則――ホームページのトップは「約束→証拠→次の一手」
問い合わせが増えるホームページは、どれも最初の数行が強いです。
価値の約束(相手の得):例)「いまの運用を変えずに、月10時間の作業を減らします。」
すぐ下に置く証拠:「導入120社」「平均問い合わせ率 +38%」「応答:当日中」
主要導線(次の一手):「無料で相談」「3分で読める資料」「事例を見る」
ここまでをファーストビュー内に収めます。
以降のセクションは、便益 → 仕組み → 事例 → FAQ → 料金の目安の順で「疑い」を一つずつ外していきます。
各セクションの末尾に次の一手(相談/資料/事例)を必ず置きます。
目安:3クリックで主要アクションに到達。“迷子にならない地図”が、最も安い広告です。
3. ページ別の作り方――導線の一貫性が「らしさ」になる
トップページ
相手の得を一文で言い切り、直下に数字の根拠。主要導線は上部・中腹・最下部の3カ所に繰り返し配置します。
サービス(製品)
ページ先に便益、次に仕組み(図で3ステップ)、そして短い事例。最後にFAQで反論処理(価格・納期・契約・保守)。「料金の目安」を隠さないほうが問い合わせは増えます。
事例ページ
三幕構成で簡潔に。「課題 → 打ち手 → 結果(数字)」+お客さまのひと言。感想ではなく効果の数字を主語にします。
会社情報
実績の数字、資格・認証、所在地、メンバーの顔。**写真の“空気”**は信頼を動かします。
お問い合わせ
項目は最小限(名前/メール/要件)。送信後に**応答の約束(誰が・いつ・どう)**を明記します。
4. 文章の掟――主語は「相手の得」、数は“曖昧”を許さない
「最適解をご提案」ではなく、「◯◯を◯%短縮します」。
「強み」ではなく、「お客さまがこう楽になる」。
事実は比較可能な単位で(件数/率/時間)。
余白を恐れず、一文は短く。
代名詞は可能な限り実体語に置換(これ→サービス名、など)。
5. 測定の設計――問い合わせの木を先に描く
実装の前に、KPIツリーを1枚で描きます。
上位:問い合わせ件数
中位:資料DL/デモ予約/見積依頼
下位:ボタンクリック/フォーム開始率/完了率
補助:滞在時間/スクロール率/離脱ページ
Google アナリティクス・タグ管理は、イベント名も日本語で(担当が変わっても迷わないため)。「資料_DL_クリック」「相談_フォーム開始」「相談_完了」など、後から見て誰でも読める名前が最強です。
6. 速度と安全――見えない所で“意思決定”を守る
表示速度(LCP/INP)を意識し、画像圧縮・遅延読み込み・不要JSの削減を最初にやります。遅いだけで、人は考えるのをやめます。
HTTPS/HSTS、権限管理、バックアップ。事故らないことが、最大の販促です。
アクセシビリティは取りこぼしの防止。代替テキスト、コントラスト、キーボード操作。できる所からで構いません。
7. リニューアルの実務――90日で“装置”に切り替える
Week 0–2|診断速度、フォーム、導線の摩擦を点検。計測の穴を塞ぎます。
Week 3–4|仮説どこがボトルネックかを特定(流入の質/導線/フォーム)。A4一枚で仮説と打ち手を合意。
Week 5–8|検証(A/B)ファーストビューの約束文、ボタン文言、入力項目の削減。“勝ちパターン”の芽を拾う期間です。
Week 9–12|横展開勝ちパターンをテンプレート全体へ移植。月次レポートを意思決定の議事に接続します。
ガントより先に“合格条件”。各ゲートで「何をもって合格とするか」を文書化すると、後戻りが激減します。
8. 予算の話――「費用」ではなく「回収の見通し」で語る
計算はシンプルです。
回収(月)=(制作費+年運用費) ÷(月間問い合わせ増 × 成約率 × 粗利)
例)制作150万円+年運用60万円。月8件増、成約25%、粗利30万円。回収 ≒ 3.5ヶ月。稟議は「現状の機会損失 → 改善仮説 → 事例根拠 → 回収期間 → リスクと代替案」で通ります。
9. ミニ事例――トップ数行を変えただけで起きたこと
あるBtoB企業は、トップで「自社の強み」を長く語っていました。
冒頭を「いまの運用を変えずに、月10時間の作業を減らします」に変更。直下に「導入◯◯社/問い合わせ率+◯◯%/当日中にご返信」。右肩に「無料相談」「資料DL」を固定。フォームは3項目に簡素化。
結果:セッション数がほぼ同じでも、問い合わせ率は1.2%→2.6%、月間問い合わせは約2倍へ。特別な魔法は不要でした。相手の得→根拠→次の一手の順番を守っただけです。
10. 公開前チェック(持ち運べる最小リスト)
主要アクションは2つ以下に絞れている
ファーストビューに約束・証拠・導線が並ぶ
3クリックで相談/資料に到達できる
事例は**課題→打ち手→結果(数字)**で簡潔
料金の目安を隠していない
フォームは最小項目、送信後に応答の約束
速度・計測・404/301・サイトマップ・構造化データの確認
まとめ――意思決定の順番を裏切らない
問い合わせが増えるサイトは、美しさより設計が美しいです。
誰に/何を/なぜ信じるか/どの導線か。
この順番を先に決め、90日で装置化する。これが最短の近道です。
最初の一歩は豪華な企画書ではありません。A4一枚の設計図です。
最も勝ちやすい相手、約束できる得、最初にしてほしい行動。この三つを書き切った瞬間、勝ち筋はもう半分見えています。




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